渉外相続において日本の法律が適用される場面は、どのような場面なのでしょうか

この設問については、かなり専門的な内容になります。

 

1 日本国の民事裁判権が及ぶ範囲について

世界各国の民事裁判権が及ぶ範囲については、本来は多国間条約などで取決めを行うのが理想的です。

そのため、これについてはハーグ国際私法会議で長く議論されて来たのですが、最終的に多数国間条約の制定は失敗に終わりました。

そのため、各国の民事裁判権の及ぶ範囲は、各国が国内法でめいめい勝手に決めているというのが現状で、場合によっては国同士で民事裁判管轄の競合が生じる可能性があります。

なお日本では、相続に関して、「相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にある場合」等について、日本国に民事裁判権が生じると規定されています(民事訴訟法3条の3)。

 

2 手続法の適用

日本国の民事裁判権が及ぶとして、次に具体的な手続の進め方についてどの国の法律が適用されるかが問題になります。

これについては、日本の民事裁判権が及ぶ場合には、基本的に日本国の手続法が適用になります(手続は法廷地法による。)。

 

3 実体法の適用

次に、実体法については、本来は多国間条約などで取り決めるのが妥当ではあるが、現状においては各国が国内法でめいめい勝手に定めています。

日本では、「相続は、被相続人の本国法による。」「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。遺言の取消は、その当時における遺言者の本国法による。」と定めています(法の適用に関する通則法36条、37条)。

 

4 注意点

これらについては、国際私法に関する非常に細かい知識が要求されるところであり、素人では手続を進めることは非常に困難です。

専門家の協力を得ることは必須といえるでしょう。

 

渉外相続において日本の法律が適用される場面は、どのような場面なのでしょうか