私は生前に親から多額の資産を贈与されています。この場合の遺留分の計算方法はどうなりますか
1 計算の基礎となる財産の確定
遺留分算定の基礎となる財産の範囲ですが、これは前にもご説明した通り、「①被相続人が相続開始時に有していた財産+②被相続人が生前に贈与した財産等-③被相続人の負債」となります。
2 被相続人が生前に贈与した財産等について
遺留分の計算においては、被相続人の遺産だけでなく、被相続人が生前に贈与した財産なども加算されることになります。
被相続人が生前に全財産を贈与し、相続発生時に遺産がゼロだったような場合に、遺留分が認められないとなると、余りに公平を欠くからです。
では、生前贈与を加えるとして、どのくらいまで過去に遡って加算することになるのでしょうか。
これについては、原則として「被相続人死亡の1年前まで」の生前贈与が加算されるのですが、例外的に、遺留分権利者に損害を与えることを知りながらなされた生前贈与については、1年間に限らず全てが加算の対象となります。
なお、ここで良く誤解されるのですが、これは被相続人から生前贈与を受けた人が法定相続人以外だった場合についての規定であり、被相続人から生前贈与を受けたのが法定相続人の場合は、また異なる扱いになります。
被相続人から生前贈与を受けたのが法定相続人の場合、何年分といった制限は無く、基本的に全ての生前贈与やこれと同視することが出来る行為が、加算の対象となります。
例えば、相続人(父)が被相続人の子(長男・次男)だけの場合で、長男が遺言によって全財産を相続したような場合は、長男や次男が父の生前に譲り受けた全ての財産(例:学生時代の高等教育用の学費や、結婚時の住宅購入資金など)が、加算の対象となるのです。
また、これら生前贈与の他に、これと同視し得る行為(不相当な対価をもってした有償行為、例:格安な金額による売却。)も加算の対象となります。
他にも、相続人が受取った生命保険金が加算の対象となるかについて良く問題となるのですが、これについては項を改めて説明します。
ちなみに、時々これを「被相続人死亡の3年前まで」だけが加算される、と勘違いされている方がいますが、これは相続税の計算に当たって「遺産」に加算される生前贈与のことであり、誤解のないよう注意が必要です。