愛人や隠し子、絶縁した子も相続人になるのですか

相続の相談に乗っていると、「あの人には相続する資格なんてない。」「何であの人が・・・。」といった相談を受けることがあります。

以下ではその代表例について説明します。

 

1 愛人・内縁の配偶者

内縁関係とは、婚姻届を提出することなく一緒に暮らすことを言いますが、例えばこのような事実婚関係にある夫が亡くなった場合、内縁の妻は法定相続人になるのでしょうか。

結論から言うと、内縁関係にある配偶者は、たとえ実態上は配偶者と同様の生活を送っていたとしても、法定相続人になることは出来ません。内縁の配偶者が一方配偶者の遺産を取得するためには、遺言等の方法によるしかありません。

 

2 愛人の子

(1)内縁配偶者の子は、父親からの認知を受けていれば、父親の相続に関して法定相続人となることが出来ます

なお、法律婚をした男女の間に生まれた子を「嫡出子」、内縁関係にある男女の間に生まれた子を「非嫡出子」と言い、従来は法定相続分に違いがあるとされていました(非嫡出子は嫡出子の1/2)。

しかし、これについては最高裁で平等原則に反するとして違憲判決が出され、その後民法も改正されましたので、現在では法定相続分に違いはありません。

 

(2)一方で、父親からの認知を受けていない限り、父親の相続に関しては法定相続人となることが出来ません

父親が死亡している場合は、家庭裁判所で認知を求めて裁判等を行うこと になりますが、DNA鑑定を行う必要があり、遺族がこれに協力してくれない場合もあります。

可能な限り、父親が生存している間に父親から認知してもらうか(任意認 知)、認知を求める調停・訴訟を家庭裁判所に起こしておくのが現実的です。

 

3 絶縁した子

よくある相談で、賭け事にふけって借金を作ったような息子に「親子の縁を切る。」と言い渡したので、その子は法定相続人にはならないはずだ、というものがあります。

結論からいうと、単に口頭で「勘当」を言い渡したからと言って相続権が消えることは無く、家庭裁判所において「廃除」の手続を取る必要があります。

なお「廃除」は遺言でも行うことが出来ますが、いずれにせよ家庭裁判所は簡単には許可の決定を出さないのが通例です。

また、法律上当然に法定相続人となる資格を喪失するものとして「欠格事由」が定められています。

これについては、①故意に被相続人あるいは相続について先順位・同順位の相続人を殺し、または殺そうとして、刑に処せられた者や、②詐欺または強迫によって、被相続人が遺言を作成することを妨げたような者、③遺言書を偽造したり、既にある遺言書を変造・破棄・隠匿した者、などが該当します。

結局、絶縁した子に遺産を渡さないためには、その旨の遺言書を作成するしかありませんが、その場合でも遺留分(後に説明します)が残されているため、子の相続分を完全に0にすることは、非常に難しいことになります。

 

愛人や隠し子、絶縁した子も相続人になるのですか