うちは資産家ではないから大丈夫ですよね
1 相続税の改正
平成27年1月1日以降に発生した相続については、相続税が課税される最低金額(基礎控除額)が次のように改正されました。
基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
例)父が死亡し、法定相続人は妻と子1人の場合
基礎控除額=3000万円+(600万円×2)=4200万円
・遺産が3000万円なら、相続税の納付の必要なし。
・遺産が5000万円なら、差額800万円に税率を掛けて相続税を算定し納付する。
このような改正からすると、相続税納付の必要性が発生する事例がかなり増えるのではないかと言われています。
2 各種特例・控除について
しかし、相続税法は、上記のような基礎控除額を前提としつつも、以下のような様々な特例を設け、負担を軽減する措置を講じています。
(1) 配偶者控除
被相続人の配偶者は、1億6000万円または法定相続分のうち、どちらか多い金額についてまで、相続税は非課税とされています。
これは、被相続人の遺産は夫婦の協力のもと形成されたものであり、夫婦間の相続に過大な相続税を課すのは酷であること、また残された配偶者の生活保障の趣旨で定められたものです。
しかし、これを安易に利用すると、2次相続(例:残された配偶者が死亡し、子が相続すること)が発生した場合、1次相続時よりも法定相続人の数が1人減って基礎控除額が低くなっていることを考えると、トータルでは損をする場合があります。
(2) 未成年者控除・障害者控除
未成年者や障害者は、自活出来るほどの収入が無いことが多いため、一定金額を相続税の対象から控除することが認められています。
(3) 数次相続控除
これは、10年以内に相続発生・相続税納付を2度経験する方については、過度な負担を避けるため2回目の相続税納付について軽減措置を講じたものです。
(4) 贈与税額控除
これは、相続開始前3年以内に受け取った贈与財産については、相続税課税の対象となるものの、既に贈与税を支払っている場合は、二重払いを避けるため、贈与税額相当を相続税から差し引くことが出来るという制度です。
(5) 小規模宅地等の特例
これは、一定の要件のもと、居住用宅地は330㎡まで、事業用宅地については400㎡までの部分について、土地の相続税評価額を80%減額することが出来る制度です。
一般の方の場合、遺産の中で最も高額なものは土地であることが多いため、この特例の節税効果は非常に大きいものとなります。
居住用宅地については、配偶者や同居している親族、生計を同一にしている親族等が相続した場合に適用されます。
また、事業用宅地(被相続人が個人事業用に使用していた土地、被相続人が同族会社に貸し付けていた宅地等)については、事業の後継者となる親族や、生計を共にしていて相続後にその宅地で事業を行う親族、同族会社の役員を務めている親族等が相続した場合に適用されます。
また、被相続人が事業として人に賃貸していた宅地(貸付事業用宅地)については、その宅地貸付事業を引き継ぐ親族が相続した場合、相続税評価額を50%減額することが出来ます。
なお、これらの具体的な適用については、専門的な判断が必要となりますので、専門家に相談する必要があります。