遺産分割はどうやって進めれば良いですか

被相続人が死亡して遺産が残された場合は、相続人間で話し合いを行って、誰がどの遺産を取得するのか決めていくことになります。

この話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。

なお、被相続人が遺言書を残していたような場合は、異なる手続になりますので注意して下さい。

 

1 開始時期

遺産分割協議を開始する時期や合意を成立させる時期については、被相続人の死亡以後であれば、特に期間制限は設けられていません(相続税が発生するような場合の申告期限や遺留分減殺請求の期間制限のみ気をつけておけば良いでしょう。)。

そのため、被相続人の死後数十年経過してから遺産分割協議が開始されるような事例もあります。

 

2 合意内容

法定相続人全員の合意が得られる限り、遺産分割協議においては、法定相続分に反する内容(例:妻が全ての財産を相続し、子は何も相続しない。)の合意をすることも可能です。

法定相続分は、相続人間で揉めて合意が成立しなかった場合の基準に過ぎず、合意が出来る限りはこの割合に従う必要はありません。

 

3 借金(債務)について

借金などの債務についても、遺産分割協議において誰が引き継ぐのか決めることは可能です。

しかし、この合意はあくまで法定相続人間の内部的合意に過ぎず、債権者との関係では何の効力も持ちません。債権者との関係では、各法定相続人は、債務額のうち法定相続分に応じた割合を、当然に承継することになります。

相続人間の合意だけで債務の帰属先を決定出来るとすると、特定の相続人に借金だけを相続させることが可能となり、債権者の利益を害することになりますので、このような規制はやむを得ないところでしょう。

 

4 遺産分割協議が無効・取消になる場合

遺産分割協議が一旦成立すると、以後は特別の無効原因や取消事由が無い限り、遺産分割協議をやり直すことは出来ません。

 

(1) 法定相続人を一部除外してなされた遺産分割協議

遺産分割協議は法定相続人全員の意思が合致して初めて成立するものですから、協議内容に賛成しない法定相続人がいる限り、協議内容は有効なものとはなりません。

このため、遺産分割協議に先立って戸籍類を正確に収集し、法定相続人を漏れなく特定する必要があります(例:自分に腹違いの兄弟がいることを死後初めて知ったような場合。)。

 

(2) 遺産の一部を見落としていた場合

見落としていた財産が高額なものであるなど、これを含めて協議していれば異なる遺産分割協議が成立する余地があったと評価されるような場合は、遺産分割協議が無効とされることがあります。

但し、見落としていた財産が少額であるような場合は、遺産分割協議は依然有効とした上で、残された財産のみについて遺産分割協議を再開することになるでしょう。

 

(3) 錯誤・詐欺・強迫

要するに、遺産分割協議に参加した際、法定相続人の一人に勘違いがあったり(錯誤)、虚偽の情報が提供されていたような場合(詐欺)、脅されて無理矢理合意させられた場合(強迫)については、遺産分割協議の無効原因となります。

 

(4) 遺言書が後に出て来た場合

この場合、遺言の存在・内容を知っていれば遺産分割協議に合意しなかったと評価されるような場合は、遺産分割協議が無効となります。

なお、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うことも可能です。

 

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