相続人に未成年者・認知症患者・行方不明者がいる場合はどうなりますか?

未成年者や認知症となった高齢者、行方不明の者であっても、法定相続人であることに違いはありません。ですから遺産分割協議を行うに当たっては、これらの者も話し合いに参加させる必要があります。

これらの者については、いずれも裁判所の手続が必要になる場合があるので注意が必要です。

 

1 未成年者

民法上、未成年者には、単独で遺産分割協議などの財産処分行為を行うことが認められていません。そのため、遺産分割協議を行うためには法定代理人である親が、未成年者を代理して遺産分割協議に参加することになります。

しかし、未成年者だけでなく親も法定相続人に該当する場合、子と親は利益相反の関係(=親が多く取得すると子の取り分が減少する関係)になります。

そこでこのような場合は、裁判所において子の「特別代理人」選任の手続をとることになります。

①申立先は、子の住所地を管轄する家庭裁判所です。
②申立人は、親権者及び利害関係人です。

 

2 認知症患者

認知症患者の中には充分な判断能力を欠いた人もいますが、そのような人の遺産分割協議に参加したとしても、遺産分割協議は無効となります。

そこでこのような場合は、裁判所において認知症患者の代理人である「成年後見人」「保佐人」「補助人」選任の手続(判断能力の程度に応じて、3種類が予定されています。)をとることになります。

① 申立先は、認知症患者本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
② 申立人は、本人、配偶者及び4親等内の親族です。
③ 相続人が「成年後見」相当であった場合、遺産分割協議には成年後見人が参加します。
④ 相続人が「保佐」相当であった場合、遺産分割協議には認知症患者本人が参加しますが、保佐人の同意が必要となります。但し、裁判所が保佐人に遺産分割協議の代理権を付与した場合は、保佐人が遺産分割協議に参加することになります。
⑤ 相続人が「補助」相当であった場合、認知症患者本人が独自に遺産分割協議を行うことが出来ますが、裁判所が補助人に遺産分割についての同意権や代理権を付与した場合は、遺産分割協議に参加する資格が制限されます。

 

3 行方不明者

法定相続人の中に行方不明者がいる場合、その者と遺産分割協議を行うことが物理的に不可能となります。

この場合、家庭裁判所に対して行方不明者の代理人である「不在者財産管理人」選任の手続をとることになります。

① 申立先は、不在者の従来の住所地の家庭裁判所です。
② 申立人は、不在者の配偶者、法定相続人、債権者らとなります。

 

4 注意事項

これらについては、比較的簡単に申立て出来る場合もありますが、専門家に依頼した方が良い場合もあります。

申立先の家庭裁判所に問い合わせて、手続について質問するのも良いでしょうが、どうすれば良いか分からない場合は、一度当事務所にご相談下さい。

 

相続人に未成年者・認知症患者・行方不明者がいる場合はどうなりますか?