話し合いがまとまったらどうするのですか

遺産分割協議が成立したら、その内容を書面化しておくのが良いでしょう。

口頭での合意成立でも遺産分割協議として法的には有効ですが、それを裏付ける証拠として、またその後の各種手続においても、必要となる場面は多々あります。

遺産分割協議書は、相続人間の「覚書」に留まる限り、特に様式・形式にこだわる必要はありません。誰が、何を相続するのか、誰が見ても分かるように書いてあれば必要にして充分です。

但し、この協議書に基づいて不動産の移転登記をする、銀行預金の解約・払戻・名義変更をする、相続税申告をする等となると、記載方法や様式には厳格な制限が課せられることになります。

一例を挙げると、被相続人(男性)が20歳以前の戸籍が存在しないような場合、20歳以前に結婚して子を設けることも論理的に可能だった訳ですから、戸籍からは全ての相続人を特定出来ていないことになります。この場合に相続登記をするためには、遺産分割協議書の中に戸籍上明らかな法定相続人全員から「他に相続人がいない」旨の文言を挿入する必要があります。

※ これについては、近時法務省の通達で「不要」とされましたが(平成28年3月11日付法務省民二第219号法務省民事局長通達)、それまでは50年近くにわたってこの悪習は維持され続けました。

また、被相続人が死亡し(一次相続)、その後相続人が死亡した(二次相続)ため、二次相続人が一次相続における被相続人の遺産分割協議に参加する場合は、「一次相続の相続人=二次相続の被相続人」から相続人としての資格を承継していることを明示的に盛り込んでおく必要があります。

その他、細かな規制が多数ありますので、これらについては司法書士や弁護士といった専門家に相談する必要があります。

また、銀行預金の解約・払戻・名義変更については、当該金融機関の所定の用紙を使って行うことが出来ますが、その場合、その用紙は単に「相続人全員の合意で払い出した。」というだけで、「誰が相続することになったか。」については記載がないものがあります。

金融機関としては「相続人全員の同意があること」さえ確認出来れば払い出しても免責されますから、「誰が相続することになったか」については関心を有していないからなのですが、誰がどの金融機関の預金を取得するかについて明らかにしたければ、やはり、法定相続人間でキチンとした遺産分割協議書を作成する必要があります。

その他、相続税申告の必要があるような場合は、相続税課税の対象となる遺産全てについて、帰属先を明示しておくことが望ましいです。

 

話し合いがまとまったらどうするのですか