遺留分を侵害するような寄与分は認められるか

これについては、非常に難しい問題を多数含んでいます。

例えば、被相続人(父)が死亡し、長男と次男の2人が法定相続人であるが、長男は長年父の家業を手伝い、ここ20年は老衰した父に代わって一人で家業を担って来たような場合です。

このような場合に、寄与分が認められることについては先に説明した通りですが、では、他の相続人の遺留分を侵害するほどの寄与分が認められるか(本件で言えば、次男の遺留分1/4を侵害するような寄与分=全財産の3/4を超えるような寄与分を認定することが出来るか)、という問題を検討する必要があります。

この点判例は、「裁判所が寄与分を定めるに当たっては、他の相続人の遺留分についても考慮すべきは当然である。確かに、寄与分については法文の上で上限の定めが無いが、だからといって、これを定めるに当たって他の相続人の遺留分を考慮しなくてもよいということにはならない。むしろ、先に述べたような理由から、寄与分を定めるに当たっては、これが他の相続人の遺留分を侵害する結果となるかどうかについても考慮しなければならないというべきである。」と判示しています(東京高裁平成3年12月24日決定)。

この判例に従う限り、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分の認定は、可能な限り避ける方向で裁判所の運用がなされるであろうとされています。

ですから、寄与分を求めて家庭裁判所に審判が申し立てられたとしても、裁判所が他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分を認定する可能性は低いことになります。

但し、調停で遺留分を侵害するような寄与分を認める合意がなされた場合は、法定相続人間で遺留分の放棄がなされたとみることが出来るので、その限度で、結果論として、遺留分を侵害するような寄与分が認められることになるでしょう。

 

遺留分を侵害するような寄与分は認められるか